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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
二里も来たかと思う頃、路は殆んど直角に右に折れて居る。最早茶路の入口だ。路傍に大きな草葺の家がある。
「一寸休んで往きましょうかな」と云って、案内者が先に立って入る。
大きな炉をきって、自在に大薬罐の湯がたぎって居る。煤けた屋根裏からつりさげた藁苞に、焼いた小魚の串がさしてある。柱には大きなぼン/\が掛って居る。広くとった土間の片隅は棚になって、茶碗、皿、小鉢の類が多くのせてある。
額の少し禿げた天神髯の五十位の男が出て来た。案内者と二三の会話がある。
「茶路は誰を御訪ねなさるンですかね」
余はMの名を云った。
「あ、Mさんですか。Mさんなれば最早茶路には居ません。昨年越しました。今は釧路に居ます。釧路の西幣舞町です。葬儀屋をやってます。エ、エ、俺とは極懇意で、つい先月も遊びに往って来ました」
と云って、主は戸棚から一括した手紙はがきを取り出し、一枚ずつめくって、一枚のはがきを取り出して見せた。まさしく其人の名がある。
「かみさんも一緒ですかね?」
実は彼は内地の郷里に妻子を置いて、渡道したきり、音信不通だが、風のたよりに彼地で妻を迎えて居ると云うことが伝えられて居るのであった。