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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens

Aozora Bunko

然し斯様な特別のは別にして、彼が村居六年の間に懇意になった乞食が二人ある。仙さんと安さん。

仙さんは多少富裕な家の息子の果であろう。乞食になっても権高で、中々吾儘である。五分苅頭の面桶顔、柴栗を押つけた様な鼻と鼻にかゝる声が、昔の耽溺を語って居る。仙さんは自愛家である。飲料には屹度湯をくれと云う。曾て昆布の出しがらをやったら、次ぎに来た時、あんな物をくれるから、醤油を損した上に下痢までした、と嗔った。小婢一人留守して居る処に来ては、茶をくれ、飯をくれ、果てはお前の着て居る物を脱いでくれ、と強請って、婢は一ちゞみになったことがある。主婦が仙さんの素生を尋ねかけたら、「乃公に喧嘩を売るのか」と仙さんは血相を変えた。ある時やるものが無くて梅干をやったら、斯様なものと顔をしかめる。居合わした主人は、思わず勃然として、貰う者の分際で好悪を云う者があるか、と叱りつけたら、ブツ/\云いながら受取ったが、門を出て五六歩行くと雑木林に投げ棄てゝ往った。追かけて撲ちのめそうか、と思ったが、やっと堪えた。彼は此後仙さんを憎んだ。其後一二度来たきり、此二三年は頓斗姿を見せぬ。