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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
日が出ると、晶々とした白金末になり、紫水晶末になるのである。山風をあらしと云えば霜の威力を何に譬えよう? 地の上の白火事とでも云おう。大抵のものは爛れてしまう。桑と云う桑の葉は、ぐったりとなって、二日もすれば、歯がぬける様にひとりでにぼろりと落ちる。生々として居た甘藷の蔓は、唯一夜に正しく湯煎られた様に凋れて、明くる日は最早真黒になり、触ればぼろ/\の粉になる。シャンとして居た里芋の茎も、ぐっちゃりと腐った様になる。畑が斯うだから、園の内も青い物は全滅、色ある物は一夜に爛れて了うのである。霜にめげぬは、青々とした大根の葉と、霜で甘くなる漬菜の類と、それから緑の縞を土に織り出して最早ぼつ/\生えて来た大麦小麦ばかりである。
霜は霽に伴う。霜の十一月は、日本晴の明るい明るい月である。富士は真白。武蔵野の空は高く、たゝけばカン/\しそうな、碧瑠璃になる。朝日夕日が美しい。月や星が冴える。田は黄色から白茶になって行く。此処其処の雑木林や村々の落葉木が、最後の栄を示して黄に褐に紅に照り渡る。緑の葉の中に、柚子が金の珠を掛ける。光明は空から降り、地からも湧いて来る。