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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
「俺ァ全くがっかりしちまった。コウ兄か伯父見たいで、何と云いや来ちゃ相談したもンだからな。今後何処へ往って相談したらいゝんだか――勘さん、卿の所へでも往くだね」と縞の夏羽織を着た矮い真黒な六十爺さんの顔を仁左衛門さんは見る。爺さんは黙って左の掌にこつ/\煙管をはたいて居る。
「寺本さんも、こちとら見たいに銭が無かったから何だが、あれで金でも持って居たらソラエライ事をやる人だったが」と隅の方から誰やら云うた。
「他が死にゃ働くなンか全くいやになっちまうね」まだ若い組の浜田の金さんが云う。
「いやになったって、死にゃえゝが、生命がありゃ困っちまうからな」
故人の弟達や縁者の志だと云って、代々木の酒屋の屋号のついた一升徳利が四本持ち出された。茶碗と箸と、それから一寸五分角程に切った冷豆腐に醤油をぶっかけた大皿と、輪ぎりにした朝漬の胡瓜の皿が運ばれた。皆蓆の上に車座になった。茶碗になみ/\と酒が注がれた。彼も座って胡瓜の漬物をつまむ。羽織袴の幸吉さんが挨拶に来た。故人の弟である。故人は丈高い苦み走った覇気満々たる男であったが、幸さんは人の好さそうな矮い男だ。一戸から一銭出した村香奠の礼を丁寧に述べて、盃を重ぬべく挨拶して立つ。