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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens

Aozora Bunko

「教えて置かねえからだよ」若い者の笑声が答える。

「炬火は如何だな。おゝ、久さんが来た。久さん/\、済まねえが炬火を拵えてくんな」

唇の厚い久さんは、やおら其方を向いて「炬火かね、炬火は幾箇拵えるだね?」

「短くて好えからな、四つも拵えるだな。そ、其処の麦からが好いよ」

「」と久さんは答えて、のそり/\檐下から引き出して、二握三握一つにして、トンと地につき揃えて、無雑作に小麦からで縛って、炬火をこさえた。

「まだかな」先刻から焦々して居る辰爺さんが大声に唸やく。

「今本膳が出てる処だからな」母屋の方を見ながら一人が辰さんを宥める。

「それはソウと、上祖師ヶ谷の彦さんは分ったかな」

「分からねえとよ。中隊でも大騒ぎして、平服で出る、制服で出る、何でも空井戸を探してるちゅうこンだ」

「窘められたンですかね?」

「ナニ、中隊では評判がよかったンですよ。正直でね」

「正直者が一番危ねえだ。少し時間に後れたりすると、直ぐ無分別をやるからな」

「違えねえ」

皆一寸黙った。

辰爺さんは、美的百姓に大きな声で囁やいた。「岩もね、上等兵の候補者になりましたってね」

「然かね。岩さんは何処に往っても可愛がられる男だよ」