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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
の二大字を書いた板額が掲って居る。然る可き目的がなければ村芝居の興行は許されぬと云う其筋の御意だそうで、此度の芝居も村の諸君が智慧をしぼって、日露戦役記念の為とこじつけ、漸く役場や警察の許可を得た。其れについて幸い木目見事の欅板があるので、戦役記念の題字を書いてくれと先日村の甲乙が彼に持込んで来たが、書くが職業と云う条あまりの名筆故彼は辞退した。そこで何処かの坊さんに頼んだそうだが、坊さんは佳墨がなければ書けぬと云うたそうで、字を書かぬなら墨を貸してくれと村の人達が墨を借りに来た。幸い持合せの些泥臭いが見かけは立派な円筒形の大きな舶来唐墨があったので、快く用立てた。今夜見れば墨痕美わしく「彰忠」の二字に化って居る。
拝殿には、村の幹部が、其ある者は紋付羽織など引かけて、他村から来る者に挨拶したり、机に向って奉納寄進のビラを書いたりして居る。「さあ此方へ」と招かれる。ビラを書いてくれと云う。例の悪筆を申立てゝ逃げる。
拝殿から見下ろすと、驚く可し、東向きのだら/\坂になって居た八幡の境内が、何時の間にか歌舞伎座か音楽学校の演奏室の様な次第高の立派な観劇場になり済ました。