Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
大抵大きなバケツ八はいで溢るゝ程になる。水気の少い野の住居は、一甕の水も琵琶洞庭である。太平洋大西洋である。書斎から見ると、甕の水に青空が落ちて、其処に水中の天がある。時々は白雲が浮く。空を飛ぶ五位鷺の影も過ぎる。風が吹くと漣が立つ。風がなければ琅の如く凝って居る。
日は段々高く上り、次第に熱して来る。一切の光熱線が悉く此径三尺の液体天地に投射せらるゝかと思われる。冷たく井を出た水も、日の熱心にほだされて、段々冷たくなくなる。生温くなる。所謂日なた水になる。正午の頃は最早湯だ。非常に暑い日は、甕の水もうめ水が欲しい程に沸く。
午後二時三時の交は、涼しいと思う彼の家でも、九十度にも上る日がある。風がぱったり止まる日がある。昼寝にも飽きる。新聞を見るすらいやになる。此時だ、此時彼は例の通り素裸で薩摩下駄をはき、手拭を持って、突と庭に出る。日ざかりの日は、得たりや応と真裸の彼を目がけて真向から白熱箭を射かける。彼は遽てず騒がず悠々と芝生を歩んで、甕の傍に立つ。先眼鏡をとって、ドウダンの枝にのせる。次ぎに褌をとって、春モミジの枝にかける。手拭を右の手に握り、甕から少しはなれた所に下駄を脱いで、下駄から直に大胯に片足を甕に踏み込む。