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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
人間が草を退治せねばならぬ程、草が人間を攻めるのである。
唯二反そこらの畑を有つ美的百姓でも、夏秋は烈しく草に攻められる。起きぬけに顔も洗わず露蹴散らして草をとる。日の傾いた夕蔭にとる。取りきれないで、日中にもとる。やっと奇麗になったかと思うと、最早一方では生えて居る。草と虫さえ無かったら、田園の夏は本当に好いのだが、と愚痴をこぼさぬことは無い。全体草なンか余計なものが何になるのか。何故人間が除草器械にならねばならぬか。除草は愚だ、うっちゃって草と作物の競争さして、全滅とも行くまいから残っただけを此方に貰えば済む。というても、実際眼前に草の跋扈を見れば、除らずには居られぬ。隣の畑が奇麗なのを見れば、此方の畑を草にして草の種を隣に飛ばしても済まぬ。近所の迷惑も思わねばならぬ。
そこでまた勇気を振起して草をとる。一本また一本。一本除れば一本減るのだ。草の種は限なくとも、とっただけは草が減るのだ。手には畑の草をとりつゝ、心に心田の草をとる。心が畑か、畑が心か、兎角に草が生え易い。油断をすれば畑は草だらけである。吾儕の心も草だらけである。四囲の社会も草だらけである。