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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
歴史は繰り返えす。細胞の記憶も執拗なものである。十六の母は其私生児を負って、平気に人だかりの場所へ出た。無頓着な田舎でも、「ありゃ如何したンだんべ?」と眼を円くして笑った。然し女に廃物は無い。お春さんは他の東京から貰われて来た里子の果の男と出来合うて、其私生児を残して嫁に往った。而して二人は今幸福に暮らして居る。
ある爺さんのおかみは、昔若かった時一度亭主を捨てゝ情夫と逃げた。然し帰って来ると、爺さんは四の五の云わずに依然かみさんの座に坐らした。太公望の如く意地悪ではなかった。夫婦に娘が出来て、年頃になった。其娘が出入の若い大工と物置の中に潜む日があった。昔男と道行の経験があるおかみは頻と之を気にして、裏口から娘の名を呼び/\した。爺さんの曰く、うっちゃっておけやい、若ェ者だもの、些ァ虫もつくべいや。此は此爺さんのズボラ哲学である。差別派からは感心は出来ぬが、中に大なる信仰と真理がある。
甲吉が嬶をもらう。其は隣村の女で、奉公して居る内主人の子を生んだのだと云う。乙太郎の女が嫁に行く。其は乙の妻が東京から腹の中に入れて来たおみやげの女だ。東京の糞尿と共に、此辺はよく東京のあらゆる下り物を頂戴する。