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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
甚だ心ないわざながら、彼等は細君に別を告げねばならなかった。別を告げて、門を出て見ると、門には早や貸家札が張られてあった。
彼等夫妻は、当分加勢に来てくれると云う女中を連れ、手々に手廻りのものや、ランプを持って、新宿まで電車、それから初めて調布行きの馬車に乗って、甲州街道を一時間余ガタくり、馭者に教えてもらって、上高井戸の山谷で下りた。
粕谷田圃に出る頃、大きな夕日が富士の方に入りかゝって、武蔵野一円金色の光明を浴びた。都落ちの一行三人は、長い影を曳いて新しい住家の方へ田圃を歩いた。遙向うの青山街道に車の軋る響がするのを見れば、先発の荷馬車が今まさに来つゝあるのであった。人と荷物は両花道から草葺の孤屋に乗り込んだ。
昨日掃除しかけて帰った家には、石山氏に頼んで置いた縁無しの新畳が、六畳二室に敷かれて、流石に人間の住居らしくなって居た。昨日頼んで置いたので、先家主の大工が、六畳裏の蛇でものたくりそうな屋根裏を隠す可く粗末な天井を張って居た。
日の暮れ/″\に手車の諸君も着いた。道具の大部分は土間に、残りは外に積んで、荷車荷馬車の諸君は茶一杯飲んで帰って行った。