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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens

Aozora Bunko

「千代かけてそゝぎ清めん我心、斗満の水のあらん限りは」と翁の歌が出来たも尤である。貢君の話によれば、斗満川の水温は※別川の其れより三四度も低いそうな。人跡到らぬキトウス山の陰から来るのだ。然もあろう。今こそ駅逓には冬も氷らぬ清水が山から引かれてあるが、まだ其等の設備もなかった頃、翁の灌水は夏はもとより冬も此斗満川でやったのだ。此斗満の清流が数尺の厚さに氷結した冬の暁、爛々たる曙の明星の光を踏んで、浴衣一枚草履ばきで此川辺に下り立ち、斧で氷を打割って真裸に飛び込んだ老翁の姿を想い見ると、畏敬の情は自然に起る。

駅逓に帰って、道庁技師林常夫君に面会。駒場出の壮年の林学士。目下ニオトマムに天幕を張って居る。明日関翁と天幕訪問の約束をする。

昨夕来泊した若年の測量技手星正一君にも面会。星君が連れた若い人夫が、食饌のあと片付、掃除、何くれとまめ/\しく立働くを、翁は喜ばしげに見やって、声をかけ、感心だと賞める。

午後は親子三人、此度は街道を西南に坂を半上って、牧場の埒内に入る。東向きの山腹、三囲四囲もある楢の大木が、幾株も黄葉の枝を張って、其根もとに清水が湧いたりして居る。