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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
かと、余は一種猜忌の眼を以て彼等を見送った。
夕方台所が賑やかなので、出て見る。真白に塗った法界屋の家族五六人、茶袋を手土産に、片山夫人と頻に挨拶に及んで居る。やがて月琴を弾いて盛に踊った。
夕食に鮪の刺身がつく。十年ぶりに海魚の刺身を食う、と片山さんが嘆息する。汽車の御馳走だ。
要するに斗満も開けたのである。
九月二十七日。美晴。
今日は斗満の上流ニオトマムに林学士の天幕を訪う日である。朝の七時関翁、余等夫妻、草鞋ばきで出掛ける。鶴子は新之助君が負ってくれる。貢君は余等の毛布や、関翁から天幕へみやげ物の南瓜、真桑瓜、玉蜀黍、甘藍なぞを駄馬に積み、其上に打乗って先発する。仔馬がヒョコ/\ついて行く。又一君も馬匹を見がてら阪の上まで送って来た。
阪を上り果てゝ、囲いのトゲ付鉄線を潜り、放牧場を西へ西へと歩む。赭い牛や黒馬が、親子友だち三々伍々、群れ離れ寝たり起きたり自在に遊んで居る。此処はアイヌ語でニケウルルバクシナイと云うそうだ。平坦な高原の意。やゝ黄ばんだ楢、の大木が処々に立つ外は、打開いた一面の高原霜早くして草皆枯れ、彼方此方に矮い叢をなす萩はすがれて、馬の食い残した萩の実が触るとから/\音を立てる。