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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens

Aozora Bunko

唯真桑瓜は甘味が足らぬ。

九月二十九日。晴。

今日は余等三人余作君及貢君の案内で、放牧場の農家を見に出かける。阪を上って放牧場の埒外を南へ下り、ニタトロマップの細流を渡り、斗満殖民地入口と筆太に書いた棒杭を右に見て、上利別原野に来た。野中、丘の根に、ぽつり/\小屋が見える。先ず鉄道線路を踏切って、伏古古潭の教授所を見る。代用小学校である。型の如き草葺の小屋、子供は最早帰って、田村恰人と云う五十余の先生が一人居た。それから歩を返えして、利別川辺に模範農夫の宮崎君を訪う。矢張草葺だが、さすがに家内何処となく潤うて、屋根裏には一ぱい玉蜀黍をつり、土間には寒中蔬菜を囲う窖を設け、農具漁具雪中用具それ/″\掛け列べて、横手の馬小屋には馬が高く嘶いて居る。苦い茶を点れて、森永のドロップスなど出してくれた。余等は注文してもぎ立ての玉蜀黍を炉の火で焼いてもらう。主は岡山県人、四十余の細作りな男、余作君に過日の薬は強過ぎ云々と云って居た。宮崎君夫婦はもともと一文無しで渡道し、関家に奉公中貯蓄した四十円を資本とし、拓き分けの約束で数年前此原野を開墾しはじめ、今は十町歩も拓いて居る。