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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
加之其処は破れ壁から北風が吹き通し、屋根が低い割に炉が高くて、熾な焚火は火事を覚悟しなければならなかった。彼は一月ばかりして面白くない此型ばかりの炉を見捨てた。先家主の大工や他の人に頼み、代々木新町の古道具屋で建具の古物を追々に二枚三枚と買ってもらい、肥車の上荷にして持て来てもろうて、無理やりにはめた。次の六畳の天井は、煤埃にまみれた古葭簀で、腐れ屋根から雨が漏ると、黄ろい雫がぼて/\畳に落ちた。屋根屋に頼んで一度ならず繕うても、盥やバケツ、古新聞、あらん限りの雨うけを畳の上に並べねばならぬ時があった。驚いたのは風である。三本の大きなはりがねで家を樫の木にしばりつけてあるので、風当りがひどかろうとは覚悟して居たが、実際吹かれて見て驚いた。西南は右の樫以外一本の木もない吹きはらしなので、南風西風は用捨もなくウナリをうってぶつかる。はりがねに縛られながら、小さな家はおびえる様に身震いする。富士川の瀬を越す舟底の様に床が跳る。それに樫の直ぐ下まで一面の麦畑である。武蔵野固有の文言通り吹けば飛ぶ軽い土が、それ吹くと云えば直ぐ茶褐色の雲を立てゝ舞い込む。彼は前年蘇士運河の船中で、船房の中まで舞い込む砂あらしに駭いたことがある。