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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
労働は好いが、何故牛馬の働までせねばならぬ乎。
然し千歳村は約千町歩の面積の内、田はやっと六十町歩に過ぎぬ。田の労は多くない。馬を使う程でもない、と皆が云う。此れでも昔は馬も居たそうだが、今は馬を飼うも不経済で、馬を使うより人力がまだ/\ましと皆が云う。共同して馬を飼うたらと云ったこともあるが共同が中々行われぬ。
馬も一利一害である。余の字には、二三年来二十七戸の内で馬を飼う家が三軒出来た。内二軒は男の子が不足なので、東京からの下肥ひきに馬を飼う事を思い立ったのである。然し石山の馬は、口綱をとって行く主人と調子が合わなかった為、一寸した阪路を下る車に主人は脾腹と太腿をうたせ、二月も寝る程の怪我をした。寺本の馬は、新宿で電車に驚いて、盲目の按摩を二人轢き倒し、大分の面倒を惹起した。其隣の馬は、節句の遊びに乗った親類の村蔵と云う男を刎ね落して、肩骨を挫き、接骨医に二月も通わねばならぬ様の怪我をさせ、其為一家の予算に狂いが来て、予定の結婚が半歳も延ばされた。
だから馬も考えものだ、と皆が言う。
(明治四十五年 六月十七日)
つゆ霽れ
梅雨中とは云いながら、此十日余思わしい日の目も見ず、畳を拭くと新しい雑巾が黴で真黒になった。