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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
娘が二人辱しめられ、村中の若い女は震え上り、年頃の娘をもつ親は急いで東京に奉公に出すやら、無銭飲食を恐れて急に酒樽を隠すやら、土方が真昼中甲州街道をまだ禁菓を喰わぬアダム同様無褌の真裸で横行濶歩、夜は何の様な家へでも入込むので、未だ曾て戸じまりをしたことがない片眼婆さんのあばら家まで、遽てゝかけ金よ釘よと騒いだりした。其れも工程の捗取ると共に、何時しか他所に流れて往って了うた。やがて起ったのが、東京の寺院墓地移転用敷地廿万坪買収の一件である。
京王電鉄も金が無い。東京の寺や墓地でも引張って来て少しは電鉄沿線の景気をつけると共に、買った敷地を売りつけて一儲けする、此は京王の考としてさもありそうな話である。田舎はもとより金が無い。比較的小作料の低廉な此辺の大地主は、地所を荷厄介にして居る。また大きな地主で些派手にやって居る者に借金が無い者は殆んどない。二十万坪買収は、金に渇き切った其或人々にとって、旱田に夕立の福音であった。財政整理の必要に迫られて居ると知られた某々の有力者は、電鉄の先棒となって、盛に仲間を造りはじめた。金は無論欲しい。脅嚇も勿論利く。