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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens

Aozora Bunko

然し其は軽々しく断ずべき事ではない。一は田中正造翁に面識なく谷中村を見ないからでもあろうが、余は従来谷中村民のあまり執念深いのを寧ろ気障に思うて居た。六年の田舎住居、多少は百姓の真似もして見て、土に対する農の心理の幾分を解しはじめて見ると、余は否でも曩昔の非を認めずには居られぬ。即ち千歳村の墓地問題の如きも、京王電鉄会社や大地主等にとっては利益問題だが、純農者にとっては取りも直さぬ死活問題であるのだ。

然るに京王電鉄は、一方先棒の村内有力者某々等をして頗る猛烈に運動せしむると共に、一方田夫野人何事をか仕出来さんと高を括って高圧的手段に出た。即ち関係地主の過半数は反対であるにも関せず、会社は村長の奥印をもって東京府庁に宛てゝ墓地新設予定地御臨検願を出して了う。霊場敷地展望台を畑の真中に持て来て建てる。果ては、云う事を聴かねば土地収用法を適用するまでの事だ、電鉄の手で買えば一反五百七十円から五百五十円までゞ買うが、土地収用法がものを云えば一反三百円か高くても三百五十円は越さない、其でも好いか、好ければ今に見ろ。斯様な調子でのしかゝって来た。

売る者は売れ、俺等は売らぬ、と澄まして居た反対側の人達も、流石に怒り出した。