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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
夕日の残る枯尾花、何処やらに鳴く夕鴉の声も、いとどさすらえ人の感を深くし、余も妻も唯黙って歩いた。我儕の行衛は何処に落ちつくのであろう? 余等は各自に斯く案じた。余は一個の浮浪書生、筆一本あれば、住居は天幕でも済む自由の身である。それでさえ塒はなれた小鳥の悲哀は、其時ヒシと身に浸みた。土から生れて土を食い土を耕して終に土になる土の獣の農が、土を奪われ土から追われた時の心は如何であろう!
品川堀が西へ曲る点に来た。丸太を組んだ高櫓が畑中に突立って居る。上には紅白の幕を張って、回向院の太鼓櫓を見るようだ。北表面へ廻ると、墨黒々と筆太に
霊場敷地展望台
と洋紙に書いて張ったのが、少し破れて風にばた/\して居る。品川堀を渡って、展望台の方へ行くと、下の畑で鉢巻をした禿頭の爺さんが堆肥の桶を担いで、か娘か一人の女と若い男と三人して麦蒔をして居る。爺さんは桶を下ろし、鉢巻をとって、目礼した。此は昨夕村会議員の一人と訪ねて来た爺さんである。其宅地も畑も所有地全部買収地の真中に取こめられ、仮令収用法の適用が出来ぬとしても、もし唯一人売らぬとなれば袋の鼠の如く出口をふさがれるし、売るとなれば一寸の土も残らず渡して去らねばならぬので、最初から非常に憂惧し、殆ど仕事も手につかず、昨日訪ずねて来た時もオド/\した斯老人の容子は余の