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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
菊はまだ褪わずして狂うものは狂いそめ、小菊、紺菊の類は、園の此処彼処にさま/″\な色を見せ、紅白の茶山花は枝上地上に咲きこぼれて居る。ドウダン、ヤマモミジ、一行寺、大盃、イタヤ、ハツシモ、など云う類の楓や銀杏は、深く浅く鮮やかにまた渋く、紅、黄、褐、茜、紫さま/″\の色に出で、気の重い常緑木や気軽な裸木の間を彩どる。常緑木の中でも、松や杉は青々とした葉の下に黄ばんだ古葉を簇々と垂れて、自ら新にす可く一吹の風を待って居る。菊、茶山花の香を含んで酒の様に濃い空気を吸いつゝ、余はさながら虻の様に、庭から園、園から畑と徘徊する。庭を歩く時、足下に落葉がかさと鳴る。梅の小枝に妙な物がと目をとめて見ると、蛙の干物が突刺してある。此はイタズラ小僧の百舌鳥めが食料に干して置いて其まゝ置き忘れたのである。園を歩く時、大半は種になったコスモスの梢に咲き残った紅白の花が三つ四つ淋しく迎える。畑には最早大麦小麦が寸余に生えて居る。大根漬菜が青々とまだ盛んな生気を見せて居る。籬の外の畑では、まだ晩蒔の麦を蒔いて居る。向うの田圃では、ザクリ/\鎌の音をさして晩稲を苅って居る。