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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
土間の入口で、阿爺の辰さんがせっせと饂飩粉を捏ねて居る。是非上れと云うのを、後刻とふりきって、大根を土間に置いて帰る。
午後万歳の声を聞いて、遽てゝ八幡に往って見る。最早楽隊を先頭に行列が出かける処だ。岩公は黒紋付の羽織、袴、靴、茶の中折帽と云う装で、神酒の所為もあろう桜色になって居る。岩公の阿爺は体格は小さい人の好い爺さんだが、昔は可なり遊んだ男で、小供まで何処かイナセなところがある。
余も行列に加わって、高井戸まで送る。真先きに、紫地に白く「千歳村粕谷少年音楽隊」とぬいた横旗を立てゝ、村の少年が銀笛、太鼓、手風琴なぞピー/\ドン/\賑やかに囃し立てゝ行く。入営者の弟の沢ちゃんも、銀笛を吹く仲間である。次ぎに送入営の幟が五本行く。入営者の附添人としては、岩公の兄貴の村さんが弟と並んで歩いて居る。若い時は、亭主が夜遊びするのでしば/\淋しい留守をして、宵夜中小使銭貸せの破落戸漢に踏み込まれたり、苦労に齢よりも老けた岩公の阿母が、孫の赤坊を負って、草履をはいて小走りに送って来る。四五日前に除隊になった寺本の喜三さんも居る。水兵服の丈高い男を誰かと思うたら、休暇で横須賀から帰って来た萩原の忠さんであった。