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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
白木の位配に「新円寂慈眼院恵光大姉」と書いてあります。慈眼院恵光大姉――其処に現われた有無の皮肉に、私は微笑を禁じ得ませんでした。而して寂しい初冬の日ざしの中に立って、莫連お広の生涯を思い、もっと良い婦人になるべき素質をもちながら、と私は残念に思うのでありました。お広さんが死んで、法律上にもいよいよ※になった厚い唇の久さんは真白い頭をして、本家で働いて居ます。唖の巳代吉は貧しい牧師の金を盗んだり、五宿の女郎を買ったりして居ましたが、今は村に居ません。盲の亥之吉も、季の弟も居ません。一人女のお銀は、立派に莫連の後を嗣いで、今は何処ぞに活躍して居ます。
お広さんを愛したり捨てたりした親分七右衛門爺さんは、今年亡くなり、而してやはり隣の墓地に葬られました。大きな男でしたが、火葬されたので、送葬の輿は軽く、あまりに軽く、一盃機嫌で舁く人、送る者、笑い、ざわめき、陽気な葬式が皮肉でした。可惜男をと私はまた残念に思うたのでありました。
「村入」の条に書いた私共の五人組の組頭浜田の爺さんも、今年の正月八十で亡くなりました。律義な爺さんの一代にしっかり身上を持ち上げ、偕白髪の老夫婦、子、孫、曾孫の繁昌を見とどけてのめでたい往生でした。