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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
年寄りが逝くのは順ですが、老少不定の世の中、若い者、子供、赤ン坊の亡くなったのも一人や二人でありません。前に言うた忠さん、それから千歳村墓地敷地買収問題の時、反対側の頭目となって草鞋がけになって真先に働いたしっかり者の作さんも亡くなりました。半歳立たぬに、作さんの十六になる一人女も亡くなりました。私共が粕谷へ引越しの前日、東京からバケツと草箒持参で掃除に来た時、村の四辻で女の子を負った色の黒い矮い六十爺さんに道を教えてもらいました。お爺さんは「村入」で「わしとおまえは六合の米よ、早く一しょになればよい」と中音に歌うた寺本の勘さん、即ち作さんの阿爺で、背の女児は十六で亡くなった其孫女でした。
まだ気の毒な亡者も、より気の毒な生き残りも二三あります。
それ等を外にしては、石山さん、勘爺さん、其弟の辰爺さん、仁左衛門さん、与右衛門さん、武太さん、田圃向うの信心家のお琴婆さん、天理教のおかず婆さん、其他の諸君も皆無事です。土の下、土の上、私共の択んだ故郷粕谷は上にも下にも追々と栄えて行きます。都落ちして其粕谷にすでに十七年を過ごして、私が五十六、妻が五十、頭は追々白くなって、気は恒春園の恒に若く、荒れた園圃と朽ち行く家の中にやがて一陽来復の時を待ちつゝ日一日と徐に私共の仕事をすすめて居ます。