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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
時は最早午後の二時過ぎ。茶路までは三里。帰りはドウセ夜に入ると云うので、余はポッケットに懐中電燈を入れ、案内者は夜食の握飯と提灯を提げて居る。
海の音を背に、鉄道線路を踏切って、西へ槍の柄の様に真直につけられた大路を行く。左右は一面じめ/\した泥炭地で、反魂香の黄や沢桔梗の紫や其他名を知らぬ草花が霜枯れかゝった草を彩どって居る。煙草の火でも落すと一月も二月もぷす/\燻って居ます、と案内者が云う。路の一方にはトロッコのレールが敷かれてある。其処此処で人夫がレールや枕木を取りはずして居る。
「如何するのかね」
「何、安田の炭鉱へかゝってたんですがね。エ、二里ばかり、あ、あの山の陰になってます。エ、最早廃しちゃったんです」
案内者は斯云って、仲に立った者が此レールを請負って、一間ばかりの橋一つにも五十円の、枕木一本が幾円のと、不当な儲をした事を話す。枕木は重にドス楢で、北海道に栗は少なく、釧路などには栗が三本と無いが、ドス楢は堅硬にして容易に朽ちず栗にも劣らぬそうである。
案内者は水戸の者であった。五十そこらの気軽そうな男。早くから北海道に渡って、近年白糠に来て、小料理屋をやって居る。