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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
百草園は府中から遠くないと聞いて居る。府中まではざッと四里、これは熟路である。時計を見れば十一時、ちと晩いかも知れぬが、然し夏の日永の折だ、行こう行こうと云って、早昼飯を食って出かけた。
大麦小麦はとくに刈られて、畑も田も森も林も何処を見ても緑ならぬ処もない。其緑の中を一条白く西へ西へ山へ山へと這って行く甲州街道を、二人は話しながらさッさと歩いた。太田君は紺絣の単衣、足駄ばきで古い洋傘を手挾んで居る。主人の彼は例のカラカフス無しの古洋服の一張羅に小豆革の帯して手拭を腰にぶらさげ、麦藁の海水帽をかぶり、素足に萎えくたれた茶の運動靴をはいて居る。二人はさッさと歩いた。太田君は以前社会主義者として、主義宣伝の為、平民社の出版物を積んだ小車をひいて日本全国を漫遊しただけあって、中々健脚である。主人は歩くことは好きだが、足は云う甲斐もなく弱い。一日に十里も歩けば、二日目は骨である。二人は大胯に歩いた。蒸暑い日で、二人はしば/\額の汗を拭うた。
府中に来た。千年の銀杏、欅、杉など欝々蒼々と茂った大国魂神社の横手から南に入って、青田の中の石ころ路を半里あまり行って、玉川の磧に出た。