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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Read みみずのたはこと (みみずのたわこと) by 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 265,437 characters · 530 screens
武太さんに同情する者は、久さんのおかみばかりである。「彼様な女房持ってるンだもの」と、武太さんを人が悪く言う毎に武太さんを弁護する。然し武太さんの同情者が乏しい様に、久さんのおかみもあまり同情者を有たなかった。唯村の天理教信者のおかず媼さんばかりは、久さんのおかみを済度す可く彼女に近しくした。
稲次郎のふる巣に入り込んだ新村入は、隣だけに此莫連女の世話になることが多かった。彼女も、久さんも、唖の子も、最初はよく小使銭取りに農事の手伝に来た。此方からも麦扱きを借りたり、饂飩粉を挽いてもらったり、豌豆や里芋を売ってもらったりした。おかみも小金を借りに来たり張板を借りに来たりした。其子供もよく遊びに来た。蔭でおかみも機嫌次第でさま/″\悪口を云うたが、顔を合わすと如才なく親切な口をきいた。彼女の家に集う博徒の若者が、夏の夜帰りによく新村入の畑に踏み込んで水瓜を打割って食ったりした。新村入は用があって久さんの家に往く毎に胸を悪くして帰った。障子は破れたきり張ろうとはせず、畳は腸が出たまゝ、壁は崩れたまゝ、煤と埃とあらゆる不潔に盈された家の内は、言語道断の汚なさであった。