Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
「寂しい住居と存じます」三十年輩の武士が云う。
「床に掛けてあるあの一軸。蕭瑟とした秋の景。何者の筆とそちは思う?」
「とんと私には解りませぬ」丈左衛門は云い淀んだ。
「弥三郎、そちはどう思うな?」
二十八、九の侍は、声をかけられて赤面した。
「は、私も不調法……」
「さてさて不風流の者どもだの。あれは雪村の風景よ。……文珠狂いの牡丹の香炉の、頂きから立ち上る香の煙り、あの匂いがわかるかの?」
若殿は二人の顔を見た。二人は黙念と腰かけたまま返辞をすることが出来なかった。若殿はニコニコ笑ったが、
「あれがすなわち班馬香よ。一抹百金と称されている世にも珍らしい名香じゃ」
床の間の脇に鹿角に掛かって、陣刀が一振り置いてあるのへキッと若殿は眼をつけたが、
「立派な造作、中身も恐らく名有る刀匠の鍛えであろう――何から何まで奥床しい心憎い住居の様子ではある」
感に堪えたというように若殿は吐息さえ洩らしたのである。
「よく降る雨だ。まだやまぬの」丈左衛門は所在なさに空を見上げて呟いた。「この雨の中を逃げた鷹はどこにどうしておることぞ」
「鷹は帰っては来ますまい」弥三郎はすぐに合槌を打って、「せっかくかかった蒼鷺めにうまく逃げられたのを恥じたと見え、弦を離れた矢のように真一文字に空を翔け、そのまま姿を見失ったからは二度と帰ることはあります