Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
九十九枚の雨戸
「呼び戻して進んぜましょう」
老人は東南の夕空へ、招くように両手を差し上げた。とあたかも合図でもするようにそれを前後に打ち振ると見る間に、忽然と一羽の鳥の影、空の一点にあらわれたが、見る見るうちに翔け来たり、若殿の頭上を二度三度輪なりに廻わると思ったが、颯とそのまま落として来て、差し出した若殿の拳の上へ、翼を縮めて浮くようにフワリと優しく止ると共に、首を傾けて若殿の顔を気恥ずかしそうに見るのであった。「秋篠!」と若殿は嬉しさに、声を逸ませて呼びかけた。
九十九枚の雨戸
「物の怪の出そうな気振りもない。これでも物の怪は出ますかな?」
百地三太夫はこう云って、ニヤニヤ笑いながら四辺を見た。
「されば」
と云いながら若殿も室の四方を見廻わした。
ここは伊那家の大奥の、奥方の寝殿の控えの間、いわば宿直の居間であった。侍女侍臣を退けて、百地三太夫と若殿と、たった二人だけで守っている。蘭灯暗く室を輝らし、閉め切った銀襖の銀箔も朦朧として影暗く、廊下を隔てた中庭の、竹の林の畔からザワザワと聞こえる風の音さえ、深更だけに物凄い。
三太夫は懐中へ手を入れて小さい紙包みを取り出したが、それを開けるとその中から真っ白い粉を取り出した。