Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme

Aozora Bunko

お前はここで死なねばならぬ

額からは冷や汗が流れている。

「鳰鳥の落籍、差し支えないな。差し支えなければ、その金で、よろしいように扱かってくれ。夜にならぬ中に連れて出たい」

「差し支えない段ではござりませぬ。しかし一応本人の心も、聞いて見たいと存じますので……」

「なるほど、それはもっともじゃ。では本人にこう云うてくれ、落籍は拙者がするようなものの、拙者から改めて鳰鳥をば、殿の側室に出すのじゃから、その意りでとこう云うてな」

「かしこまりましてござります。本人にとっても大した出世、きっと喜ぶでございましょう」

長者はそわそわと室を出た。

それから間もなく一挺の輿が、頑丈な男に担がれながら、藪原長者の館を出た。深編笠の武士が、輿の後から悠々と、つき添いながら歩いて行く。

輿には鳰鳥が乗っている。

蒼黒い空には無数の星が、宝玉のように輝いて、まだ遅い月は出ていなかった。秋の夜嵐に誘われて、バラバラと木の葉が輿を打つ。武士も輿舁ぎも、輿の中の人も、咳一つしなかった。黙々と一行は歩いて行く。

お前はここで死なねばならぬ

こうして輿も武士も夕暮れの山道に消えてから、ものの半刻も経った頃、雑沓する長者の館の門を、あわただしく潜ぐる武士があった。