Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
傴僂の丑松
四辺は森と静かである。物凄いほどに静かである。
おりから手近かの山の頂きから号笛の音が響き渡った。それを合図に諸所の谷や諸所の森陰岩陰からそれに答える笛の音がヒューヒューと鳴り渡り、峠の中腹と覚しい辺りから虚空に高く一条の烽火が金竜のように昇ったかと思うと再び前の静寂に帰り谿谷は睡眠に入ったらしい。
恐らく敵国神保帯刀方の、間者が谿谷に分け入ったのを縛め捕ったに相違ない。
傴僂の丑松
長い春の夜もやがて明けて華やかな朝陽が谿谷の国の隅々隈々にまで射し入って夜鳥のしめやかな啼き声に代わって暁の鳥の勇ましい声が空と地上に満ち満ちた。春靄が次第に晴れるに連れてすくすくと現われる山や丘の山懐や中腹から青い煙りの立ち上るのは朝炊の煙りに相違ない。朝炊の煙りの立つからにはそこにも部落はあるのであろう。そうだ、そこにも部落はある。この谿谷の四方八方部落はどこにでもあるのであって、部落の民は朝起きるとまずご主君の寿命を祝ぎ次に朝炊をしたためる。それからひとしきり武芸にいそしみ、そうした後に各自の仕事――牧畜、耕作、香具師、伐採、鉱山の坑夫や選婦などに進んで従事するのであった。