Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
二人はいつか寄り添ってじっと手をとって彳んだ。遥か離れた花木の下にあらぬ方を向いて立っているのは芳江に仕える乳母であった。
四辺には他には人影もない。
高貴の美女と高貴の美男は、こうして誰にも累わされず、心ゆくまでその媾曳を、朧月の下辺に続けて行く。しかし気高いこの二人はそもそもどういう身分の者であろう? 男は草色の衣裳を着、細身の太刀を佩いている。高朗としたその姿は若い公卿衆とでも云いたげである。女はなよやかの垂れ髪で、手に小扇を持っている。二人の年を合わせても三十五にはよもなるまい。所詮、二人ともむくつけいこの谿谷の部落に生い立った者とは思われない。
女は男にふと縋った。
「私は悲しゅうてなりませぬ」
男はそれを労るように、
「すべて歓楽の裏一重には悲哀があるとか申しますが、その悲哀が偶然あなたを襲うたのでござりましょうよ! おや、夜鶯が啼いております」
二人は耳を傾けたが、なるほど、鳥は啼いてはいるが、鶯の声とは少し違う。
「鶯は夜は啼かぬものと云われているではござりませぬか」
「さよう、大和の鶯は夜啼かぬものでございます。しかし、先夜、あなたと一緒に、オースチン師より承わった話に、暖い南欧羅巴の西班牙とか申す国では、夜に限って啼く鶯があるというではござりませぬか。