Japanische Klassiker mit Furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Lesen Sie 平の将門 (たいらのまさかど) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.193 Zeichen · 463 Bildschirme
彼は、ぬっと、突ッ立った。何かに衝き上げられたように。――そして芦荻の間を見まわし、対岸に渡る舟を探し求めていると、一頭の馬を曳いた男が、
「おうっ。お館さま。河の上にも、岸辺にも、お姿が見えないので、どうしたかと、ずいぶん探しましたよ」
と、思いがけぬ声をかけて近づいて来た。
男は、豊田の館の郎党のひとりで、牛久の梨丸というまだ十七、八の小冠者である。むかし家に仕えていた乳母の末子であった。将門が京から帰って来たと聞くと、牛久の里にまだ生きている乳母が、ぜひ、召使うてやって下されと、むかしを忘れずに向けて来た者なのだ。いわば乳兄弟でもある。将門は、乳母の遺物と思って可愛がっている。梨丸も、愛に感じて、生涯を托す主人として働いていた。
「――梨丸か。何しに来たんだ? おれは、常陸へ出かけるのだ」
「ですから、馬がなくては、御不便でしょう。いずれ、水守の叔父御さまか、羽鳥へも、お廻りでしょう」
「うム。……ずいぶんな、道程ではあるな」
「河原畑で、かっと、御立腹なすって、そのまま、一散に、お立ちになってしまったと、ほかの者から聞きましたので」
「館の馬を、曳いて、追いかけて来てくれたのか」