Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
月を浴びて竜虎のように
芳江も耳を澄ましたが、
「ほんに今宵は次から次と邪魔ばっかりがはいる中にいつか時刻が経ったそうな」
「おさらばでござる芳江殿」
「帰路をおいとい遊ばせや」
市之丞はスタスタと足早に谷の下り口へかかったがやがて姿は見えなくなった。
見えなくなったその後を芳江は暫時眺めていたがふと寂しそうに首垂れた。
粂太はその袖を背後から怖々ながらそっと引いた。
引かれて嫋かに振り返ったが、
「粂太、お前か、ええ白痴が!」
ハッとその袖を振り切ると吟味所の中へ走り込んだ。香料の匂いばかり後に残り美しい姿は消えたのである。
白痴の粂太はぼんやりと空を仰いで佇んだが、不具者とは見えぬ美しい顔に月の光が附し添って可笑し気な哀れさが漂っている。とその眼尻から涙が流れ次第に頬へ伝わって行く。それがまた哀れにも可笑しく見える。
不意にその時嘲笑うような男の声が聞こえて来た。
「悲しいか、悲しいか、え、粂太!」
月を浴びて竜虎のように
傍の灌木の茂木を分けてヌッと現われたのは紋十郎であった。
「悲しいか、粂太? や、泣いているな。泣くほどそちは悲しいのか? ……諦めるがいい諦めるがいい。とても適わない恋だからの――もっとも俺の依頼を聞いて、俺の云う通りにしてくれたら、そこは百人長の紋十郎だ、何んとかお前の味方になって、あの美しい芳江姫がお前を可愛がっ