Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
気の毒そうに春房は訊いた。
「ハイ有難う存じます。浮雲いところをお助けくだされ、何んとお礼を申してよいやら、幸い怪我も致しませぬ」
女は恭しく一礼した。
「おおそうか、それはよかった。……見ればどうやら踊り子の様子、城内の者か城外の者か?」
「ハイ妾は城外上松、寝覚の床の畔の者、名は六と申します」
「連れはあるかな? それとも一人か?」
「妾一人でございます」
「それは少し大胆すぎるな。もう相当夜も深い、早く家へ帰るがよい。しかし一人では心もとない。送りの者を付けて進ぜる」
「ハイ有難うは存じますが、まだ帰りたくはございません」
「さては踊りが好きと見えるな」
「踊りは好きではございませんが、尋ねる人がございますので……」
「ああそうか、それならよい」
こう云いながら春房は、ここまで仄かに射し込んで来た篝の赤い火の光で、お六の顔をじっと見た。
「可愛らしい顔だ。清浄な顔だ。深山の霊気が集まって、作られたような気高い顔だ」
女色に淡い春房ではあったが、こう思わなければならないほど、無邪気な清浄な美しい顔を、そのお六は持っていた。
春房と別れた娘のお六は、馬場の方へ小走って行った。