Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
「お前の名は何んと云います」
「ハイ、六と申します」
「そうではあるまい、そんな筈はない」威圧するように鳰鳥は云った。「お前の名は鳰鳥であろう」
「いえいえ六と申します」
「たとえ今まではそうであってもこれからお前は鳰鳥なのです。……お前の名前は何んと云います?」
名状しがたい圧力を感じ、お六はブルブルと顫えたが、
「ハイ、鳰鳥と申します」
「そうです。お前は鳰鳥です」本物の鳰鳥はこの時初めて、さもこそというように笑ったが、「産れはどこ? 云ってごらん」
「ハイ、上松でございます」
「そうではあるまい、そんな筈はない。お前の前身は遊女です。藪原宿の遊女です」
するとお六は首を垂れ、しばらくじっと考えていたが、
「ハイ、遊女でございます」
「そうして今は木曽のお館義明公のご愛妾です」
「ハイ、さようでございます」
夢見るような心持ちで、お六は茫然とそう云った。
その時、本物の鳰鳥はスーと奥の間へはいって行ったが、それと引き違いに一人の老女が恭しく現われた。
「鳰鳥の方様、お召しかえを」
しかしお六は何んとも云わない。ただぼんやりと立っていた。
すると玉章が囁いた。
「お次へお運びなさりませ。