Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
しかし老人は返辞をしない。
「ああもうこれはこときれたと見える」
すると老人がムーと呻いた。
「おおご老人! 気付かれたかな。心を確かにお持ちなさりませ」
「無念!」と老人は悲痛な声で、「卑怯者め! 瞞し討ちとはな!」じいいっと鳰鳥を見詰めたが、「おっ、お前は! お前様は!」
「通りがかりの旅の者。……敵は退散。心配ござりませぬ」
「おおそうか。忝けない!」老人はムックリ起き上がろうとしたが、急所の傷手に身動きもならぬ。
「多年の苦心。……今は水泡! いやいや、いやいや、そうはならぬ! あッあッあッ旅のお女中!」
「仰せられませ仰せられませ! 心置きなく仰せられませ。怪しいものではございません。遺言もあらば仰せられませ」努めて優しく鳰鳥は云った。
「秘巻!」と突然老人は血を吐くような苦しそうな声で、「岩の背後! 枯草の中!」
で鳰鳥は四辺を見た。わずか離れて小岩があり、そのうしろの草の中に、唐織錦の巻物が木の葉に蔽われて隠されていた。
「おおこれだ! おおこれだ!」鳰鳥の持って来た巻物をムズと老人はひっ掴んだが、とこう云うとそのままピッタリと額へあて、「これこそ倶係震卦教、敵の眼を偽き隠したが、悟られもせず健在健在! いざやこれより木食仙人を訊ね、教理の解釈秘法の修行を、つぶさにご教授願わねばならぬ! あら有難や!」