Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
鳰鳥はさり気なくこう云った。しかし彼女のそういう声は怪しく顫えを帯びていた。
「自分の部屋へ帰られるとな?」甚五衛門は嘲笑い、「殿のお許しも出ぬうちに、勝手に部屋へ戻られるのはチト我儘ではござらぬかな」
「私は我儘が大好きじゃ!」鳰鳥も嘲笑を浮かべながら、「私は大の我儘者じゃ。私は元来遊女の身分、自分から好んでこのような窮屈な館へ参ったのではござらぬ。好まぬ私を無理に連れ出し、窮屈なお館へ上げたのはいったいどなたでございます? 好まぬ館へ参ったからは、せめて少しの我儘ぐらいは、許されるのが当然じゃ」
「少しぐらいの我儘ならば大目に見遁がしも致しましょうが、お家にとっての大兇器、マドリド司僧の髑髏盃を、蔵から出そうと仰せられるは、一通りの我儘ではござりませぬ。それのみならずこの某がその髑髏盃の由緒を語り、その髑髏盃のこれ在る事を、どうしてご存知なされたかと、お尋ね致すや顔色を変えてご返辞もなく座を立たれますは……」
「私が返辞をしなかったとか? いやいや私は答えた筈じゃ。髑髏盃がお館に在ることを私は侍女から聞きました」
「いやいやそれは偽りでござる! 腰元も近習も知る訳がない! ――がしかしここにただ一つ、それを知られる手段がござる」