Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
岩石人どもがいるのだろう。
次第に火の光が近付いて来た。
とうとう米主は火の側まで行った。しばらく岩蔭に身を窃め、彼らの様子を窺った。
岩を畳んだ巨大な囲炉裡が、広場の中央に築いてあった。そこで猛火が燃えていた。炉の上に大きな鍋があった。何かグツグツ煮えていた。湯気が濛々と立ち上がり、悪臭が強く鼻を刺した。
炉を取り巻いて人間がいた。片足ない奴、片腕ない奴、鼻の欠けた奴、耳の欠けた奴、唇の取れた奴、眉毛の抜けた奴、兎口の人間、傴僂の人間……虫のように這い、犬のように寝そびれ、ウジャウジャと無数にかたまっていた。
互いに彼らは喚いていた。
「腹一杯食いてえものだ」
「食事以外に慾はねえ」
「俺らはいつも空腹だ」
あちこちで云い争っていた。
「誰だ誰だ俺を撲ったのは」
「こん畜生奴、ただは置かねえぞ」
「痛いよう! 痛いよう!」これは子供の声であった。
「こん餓鬼アふんとに何を泣くだあ」
これは女の声であった。
「寒い寒い、おお寒い! 火にあたらせてくれ火にあたらせてくれ!」これは老人の声であった。
突然この時怒鳴り声がした。
「やかましい奴らだ! 静かにしろ!」
一度に森然と静まった。