Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
右門の隠れ家
御嶽冠者は眉毛一本、動かそうとはしなかった。
右門の隠れ家
千曲川の岸に蓮華草が咲き、姥捨山の山つづきに百鳥が囀りを交わすようになると、向かい合った稲荷山と篠井の里とは、薄紫の春霞に朝と晩とを化粧され、里人の顔にもカラリとした長閑な光が浮かんで見える。長かった信州の荒涼たる冬もこうして過ぎ去ってしまったのである。
篠井の里の片端、野菜の緑に囲繞されて、一軒の農家が立っていた。背戸には咲き乱れた桜の花が、今昼風に繽紛と散り、その花弁の幾片かが縁の中へまで舞い込んで来た。
その縁に一人の侍が、病気あがりらしい蒼白い顔を、静かに春陽に照らしながら、うつらうつらと考えている。
「今日も春らしいよい天気で桜もチラホラ散り出しましたのう」
こう云いながら勝手口から出て来た一人の婦がある。侍はその方を振り返り、
「ほんとによい天気でございますの。おかげで私の金瘡もだんだんよく成って参ります。これというのもそなたという情深いお方があったればこそ。ご恩はいつまでも忘れませぬ」
「何んの何んのこれしきの事、そのようにお礼などおっしゃられてはかえって痛み入りまする。どれ一つお茶なと入れましょうか」