Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.455 Zeichen · 290 Bildschirme
銭形平次捕物控
一
一
「八、あれを跟けてみな」
「ヘエ――」
「逃がしちゃならねえ、相手は細かくねえぞ」
「あの七つ下がりの浪人者ですかい」
「馬鹿ッ、あれはどこかの手習師匠で、仏様のような武家だ。俺の言うのは、その先へ行く娘のことだ」
「ヘエ――、あの美しい新造が曲者なんですかい。驚いたな」
「静かに物を言え、人が聞いてるぜ」
銭形の平次と子分のガラッ八は、その頃繁昌した、下谷の徳蔵稲荷に参詣するつもりで、まだ朝のうちの広徳寺前を、上野の方へ辿っておりました。
「ガラッ八、よく見ておくんだよ、心得のために話しておくが――」
「ヘエ――」
平次は一段と声を落しました。
「武家はちょいと怖い顔をしているが、よくよく見ると顔の造作の刻みが深いというだけのことで、まことに人相に毒がねえ、――牙のある獣に角がなく、角のある獣に牙がねえのと同じ理窟で、あんな怖い顔をした人間は、十中八九は心持のいいものだ。ところが本当の悪党とか、腹の黒い人間というものは、思いの外ノッペリした顔をしているものだよ。見るがいい、あの武家の袂の先には、ここからでも見えるくらい、朱が付いてるだろう、あれが手習師匠の証拠だ、子供の手習を直すとき朱硯に袂の先が入ったんだろう」