Japanische Klassiker mit Furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Lesen Sie 平の将門 (たいらのまさかど) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 232.193 Zeichen · 463 Bildschirme
その客の中で、小次郎にとって、もっとも、うれしい人が、来ていてくれた。それは真実、忘れ難い人なのである。
「お久しゅうございました」
小次郎は、その人の前へ坐って、いつまで、ほかを、かえりみなかった。
「御成人ぶりだの……」と、その人は、しげしげと、彼を見て、温和な唇もとに、杯をあげていた。
菅原景行である。
少年の日、この人に、あやうい一命を、助けられたことがある。――菅原道真の三番目の実子と生れ、学才もあり、人物がよくても、ついに、こんな遠国の地方吏として、一生を、世にも知られず、しかも不平もいわず、黙々と、終る人もあるかと思うと、中央の顕官権門の存在が、妙なものに思われてくる。
「どうだったね。……都は」
「お恥かしいことですが、何一つ、習い得た事もありません」
「これからは、ずっと、お国元かの」
「総領ですから」
「良持どのが、生きておいでたらなあ。……よろこぶだろうし、お許も、倖せなものだが」
叔父の良正が、じろじろ、見ているせいか、景行は、口かずを、きかなかった。そして、満座の酔が、歌や、手拍子に、崩れ出す頃、いつのまにか、そっと、先に帰ってしまった。