Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
珍らしい食物でも貰った時には、お霜はきっと千曲を呼んで、自分は食べないでも彼女にはくれた。たとえお霜は襤褸を下げても彼女には小綺麗の着物を着せた。
このように可愛がって育てられたためか、貧しい家庭の娘にも似ず、千曲は鷹揚で情け深い立派な娘として成長した。彼女は近所の褒められ者であった。近所に剛情な娘でもあって両親の云いつけを聞かないような時には、親はその娘に云うのであった。「千曲さんをご覧、千曲さんだったら、そんな剛情は張らないだろう」と。夜遊びをするような娘があると、その親はきっと云うのである。「千曲さんをご覧、千曲さんだったら、そんな夜遊びはしないだろう」と。こう云われると娘達は今までの剛情や夜遊びをやめて、善い娘の子になるのであった。
彼女はこうして篠井の里で今年の春まで暮して来た。
しかし清らかな千曲川の水へ、桜の花弁が散り浮く頃、弥生も末の逝く春の頃に、彼女は住みなれた篠井の里を、未練気もなく振り棄てて遠い旅路に出たのであった。
いったいどういう理由があって若い女の一人旅へ、彼女は出かけて行ったのだろう?
近所の人々はそう云い合って、彼女の所業を怪しんだ。