Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
「南無三、道を取り違えたか」
思わず右門がこう叫んで、立ち止まった時は秋の陽が、聳える高山の頂きへ半ば没しつつやや躊躇し、残照淡く空に映え、山々の影樹木の影、そして二人の男女の影がその残る陽に照らされて、地上に長く印するのが、寂しく思われる時刻であった。しかも二人の立っている位置は、前方を見ても峨々たる山、後方を見ても聳える山、右も左も山と谷の、荒涼寂寞たる境地である。
二人は呆然と眼を見合わせ、暫時は言葉も出なかった。
暮れるに早い秋の日は、誰に遠慮をしようともせず、釣瓶落としに落ちかかり、忽ち、四辺は暗くなった。
「とにかく参ろうではございませぬか。今夜はどうやら月もなく星さえ曇って見えない様子。枯木を集めて松火とし、道を照らして進みましたら危険いこともありますまい」
こう云ってかえって山尾の方が男の右門を励ますので、右門はそれに力を得、枯木と生葉を掻き集め、早速に作った松火二挺。火打ちで打ち出す火を点じ、それを二人で振り照らし、せめて本道へ出ようものと、熊笹、薄を踏みしだき、先へ先へと踏み出した。
颯々と吹くは夜の秋風。ヒューヒュー鳴るは風に吹かれて、木々の梢が啼くのでもあろう。