Japanische Klassiker mit Furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lesen Sie 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 335.908 Zeichen · 669 Bildschirme
「市之丞様!」
とその声を聴くや、老師に負われていた芳江姫は歓喜の声を筒抜かせた。
「おおそれでは市之丞様は活きておいででございましたか、お願いでござります老師様、背から下ろして下さりませ。市之丞様が土牢の中から妾を呼んでおりまする」
「狐狸の沙汰じゃ! 悪霊の惑わしじゃ! 一旦殺された市之丞殿が蘇生えって来る訳はない! ああこんな機時幻灯機械があったら、土牢の内を照らして見るものを!」
「そのお疑いはごもっともながら決して我々は狐狸ではござらぬ。妖怪変化でもござりませぬ」
こう云ったのは威あって涼しい、一番最初の声であった。
「やあ者ども松火を点けよ!」――涼しいその声はこう叫んだ。
声の終らぬその中に土牢の内も地下道も真昼のように明るくなり、格子を払った土牢の中に一団の武士整斉と並び此方を見ているのが三人に見えた。
毛皮を打ち掛けた牀几の上へ悠然と腰掛けた一人の武士、これぞ一団の大将と見え、身には直垂を付け鎧を着流しまだ角髪の艶々しきに故意と冑を従者に持たせ烏帽子を額深く冠っている。
これこそ他ならぬ御嶽冠者。すなわちこの物語の主人公であった。
冠者の左側に坐っているのは数馬にとっては一面識ある冠者の義弟石川五右衛門で、黒糸縅の大鎧、総髪の上に鉢巻をし、陣刀を握って杖突いている。