Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.455 Zeichen · 290 Bildschirme
ちょうどその時、――
「喧嘩だッ」
「引っこ抜いたぞ」
「危ないッ、退いた退いた」
「わッ」
という騒ぎ。両国広小路の人混みの中に渦を巻いた喧嘩の輪が、雪崩を打って柳橋の方へ砕けて来たのでした。
「どうした、鳶頭」
「喧嘩ですよ、浪人と遊び人で」
「荷物が大事だ、中へ入れろ」
「ヘエ――」
葭簀張の水茶屋で、喧嘩にも夕立にも、閉める戸がありません。三千両の釣台はそのまま土間を通って磨き抜いた茶釜の後ろ、――ほんの三畳ばかりの茣蓙の上に持込まれました。前から予告があって、時分時には春木屋の荷物が休むことになっていたので、お通も、お通の母親も、これは文句がありません。
もっとも釣台を担ぎ込んだ一と間は、すぐ神田川の河岸っぷちで、開け放した窓から往き交う船も見えようという寸法ですから、涼みにはまことに結構ですが、物を隠すにはあまり上等の場所ではありません。
鳶頭の辰蔵は、釣台の上に掛けた油単を引っ張って、一生懸命、千両箱を隠すと、番頭の源助はその前に立ち塞がって、精いっぱい外から見通されるのを防ぎました。
続いて、もう一と打、二た打、すさまじい稲光りが走ると、はためく大雷鳴、耳を覆う間もなく篠突くような大夕立になりました。