Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.455 Zeichen · 290 Bildschirme
「ヘエヘエ」
「御新造様が鈴を御覧になりたいとおっしゃるよ、ちょいとここから入っておくれ」
「ヘエヘエ」
誘われるままに、ヒョイと庭に入ると、後ろの潜戸はピシリと締められましたが、その機みに振り返って見ると、呼込んだ娘というのは、三四日前、広徳寺前から跟けて、入谷で首尾よく撒かれた、あの袖の先に血の付いた袷を着ていた娘だったのです。
「あッ」
ガラッ八は、思わず声を出しましたが、庭石に躓いたような振りをして誤魔化しました。様子はすっかり変っているし、手拭は吉原冠りにしているし、たぶん俺とは気が付くめえ――といった、相変らずガラッ八流の楽天的な心持で、娘の後に跟いて、寮の庭を廻りました。
「御新造様、鈴屋を呼んで参りました」
障子の中へ声を掛けます。
「御苦労だったね、八重」
優しく応えて、秋の朝日の這いよる障子を開けたのは、二十二三とも見える、少し病身らしいが、恐ろしい美人、ガラッ八も吉原冠りの手拭を取って、思わずヒョイとお辞儀をしてしまいました。
眉の跡青々と妙に淋しく細りしておりますが、水際立った元禄姿で、敷居の上に桜貝のような素足の爪を並べて立つと、腰から上へ真珠色の霞が棚びいて、雲の上から美妙な声が聞えるといった心持、ガラッ八は一ペンに降参してしまいました。