Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.455 Zeichen · 290 Bildschirme
老巡礼の踵を返した後ろ姿に声をかけたのです。
「ハイハイ、左様でございますよ、お神さん、――取って十九、左の眼が見えない、お染という娘を御存じじゃございませんか」
「お染さんというのは、一人二人知ってるけれど、左の眼が悪いのは知らないねえ」
「どなたも左様おっしゃいます。――やはりこの世では縁がないのでございましょう。――そう思って諦めようとは思いますが、浅ましいことには諦めきれません」
老巡礼は声もない嗚咽に、皺だらけな頬を引きつらせながら、ボロボロと涙をこぼしているのです。
「まア、お気の毒な」
女主人は思わず鼻を詰らせましたが、それ以上に立入ったところで、どうにもならないと思い返した様子で、トボトボと遠ざかり行く、老巡礼の後ろ姿を見送るばかりでした。
「親分」
八五郎は路地の外に居る平次の姿を見付けると、老巡礼から目を離して、その側に寄ります。
「シッ、――もう少しあの巡礼の後を跟けるんだ。俺は外に仕事がある」
「いやな術じゃありませんか、親分、引っ括って二三束引っ叩いてやりましょうか」
ガラッ八の八五郎は、巡礼の愁歎を、物貰いの念入りな術だと思ったのでしょう。