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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「……とは、思いましたが」

「将門っ」

「は」

「奥歯に物のはさまったようないい方をするな。貴様は、何か、思いちがいしているな。へんに」

「…………」

「よろしいか。よく聞けよ。十数年という永い間、とまれ、将頼以下の、父なし子、幾人も、あのように、無事、成人させて来たのは、たれの情けか」

「…………」

「そればかりじゃない。もしまた、われら叔父共の庇護がなかったら、兄良持の遺した土地といえ、館といえ、牧場といえ、あの通りに、難なく、今日まで、貴様たち兄弟の手に、残っていると思うのか。――とんでもないやつだ」と、良正は、手にしていた杯の中へ唾するようにいって、それを仰飲した後、またいった。

「そんな甘い考え方だから、ひいては、恩義は忘れて、逆うらみなど抱くようにもなる。――この広い坂東の曠野では、毎日、東から陽が出て、西に陽が沈んでいるだけのように、貴様などの眼には、見えるかもしれぬが、どうして、間がな隙がな、那須、宮城などの、東北の俘囚や、四隣の豪族が、一尺の土地でも、蚕食しようと、窺いあっているのだぞ。――それを十数年の間、防ぎ守ってくれたのは誰だ。いや、たとえ、以前のような宏大な田領、荘園はいささか減ったにしても、都から帰って来て、さっそく、住む家にも困らず、耕す土地もあり、家名も郷土に存続しているという大恩は、たれ