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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

狼友

叡山の約とは、何をさすのだろうか」

「あはははは。隠さんでもよい。おれも一味の人間だ」

「でも、それについて、使いに来たというのは?」

「まあ、そう性急に、片づけるにも及ぶまい。おたがい、遠大な計をもつ身だ。当分は、厄介になるつもりだから、折を見て、また篤と、談合しよう。……それよりも、その後はどうだ。……え、将門。あの江口の遊宿の草笛みたいな君には、その後、出会わないのか。あはははは。まだ、独身だというじゃないか。意気地がないな、いつまでも」

狼友

かなわない。どうにも、五分に取組めない。不死人と彼とでは、大人と子どもだ。

もっとも、十六の春、将門が都の土を踏んだその日、へんな尼に、誘拐かされて、祇園の森に、連れこまれた晩――そのときすでに――八坂の不死人は、焚火をかこむ、怪しい夜の人種のうちでも、頭目と立てられていた盗賊の大人であった。

(かなわないのも、むりはない……)

将門は、肚の中で、かぶとを脱いだ。と同時に、不死人が都においての神出鬼没ぶりを思い出して、急に、酔が寒気に変った。――都に遊学した最初の日からの妙な機縁で、この男に、酒の味を教えられ、この男の、情的な一面に、親しみ馴れて、いつか、恐さもなく、またなき友みたいに、交わって来たが、考えてみると、これは大変な珍客である。