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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
痣
けれど、将門様は、心のうちでは、時々、お泣きにならずにいられないのでしょう」
「そうかも、しれない」
「そうしたら、私も時々、心のうちで、泣かずにいられなくなるかもしれません」
「え。どうして」
「なぜでしょう。あなたのお心が、だまっていても、私には、いちいち、月と水のように、すぐ映ったり、揺れたりします」
「桔梗どの。……ほんとに」
「え。ほんとに」
「ほんとなら。……」と、彼は手をのばした。そして急に、むくっと、身を起しかけたが、
「……痛い」と、顔をしかめて、からだを、折り曲げた。
「あれ。いけません。急にお起きになっては」
桔梗は、彼を抱えて、寝かしつけた。それは、弟をいたわる姉のようなしぐさであった。
痣
体は快くなった。もう、身うごきに、不自由はない。
留守をしている豊田の弟共も、さだめし、案じていることだろう。帰らなければなるまいと思う。が、帰りたくない思いもする。
同じ容子が、桔梗にも見える。
うすうす、知っているかのように、野霜の具足師の老夫婦は、なお将門に親切であった。客人としてでなく、家族あつかいの、温かさである。
「自分の館でも、このように、朝夕、揃って、飯時に笑えたら」