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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
狂風陣
という寝耳に水の報らせだった。
狂風陣
「え、秀郷が。……間違いだろう? ……どうして秀郷が、この将門の敵にまわるわけがあるのか」
初め、将門は、信じなかった。
第二、第三の早馬がはいっても、疑っていた。
が、事実と、わかるや、彼は見得もなくあわて出した。秀郷の老練や、下野の武力には、脅威も抱いている。また、押領使たる彼の地位へも尊敬を払って、従来、秀郷の職能と一族の田野は侵害しないことに努めても来たのである。
それが、その秀郷が。
彼は、自分の敵と考えられる以外の人間は、すべて、味方ではなくても、善なる人間として、少なくも、万一のばあいとか、応変の危害など感じないで通して来た男である。――だから、こんな時、狼狽の色もつつまず、あわてふためいたり、極端に、こんどは、感情をあらわして、罵ったりするのを見ると、部下の眼にさえ、彼の魯鈍と、愚直さえ、はっきり見えた。頼みがいなき人物と、見えもした。
さきに、敵将の妻を放してやったことといい、この仰天ぶりを見て、その涙もろさや、人のよさに、いっそう心を彼に協せて、生死も共にという気を強めたのは、彼の一族中や、将士のうちでも、極く少数にかぎられていたろう。